
大津欣也とは、心臓病や心不全の研究で知られる日本の医師・研究者です。
現在は国立循環器病研究センターの理事長を務めており、日本の循環器医療を支える存在として注目されています。大阪大学医学部卒業後は海外の主要研究機関でも経験を積み、心臓におけるオートファジーの役割を世界で初めて明らかにした実績でも知られています。
この記事では、大津欣也氏のプロフィールや経歴、現在の役職、主な研究実績をわかりやすくまとめました。
- 大津欣也の経歴と歩み
- 国立循環器病研究センター理事長としての現在
- 大津欣也の研究実績:心臓とオートファジー
- 大津欣也の業績が循環器医学に与えた影響
- 【まとめ】大津欣也は循環器医学の研究と医療を支える人物
大津欣也の経歴と歩み

大津欣也氏のキャリアは、国内の臨床現場から始まり、海外の複数の研究機関を経て、日本の循環器医療の中枢に至るという幅広いものです。研究者としてだけでなく、臨床医や教育者としての側面も持ち合わせており、その歩みは日本の循環器内科学の発展と重なっています。
ここでは時系列に沿って、大津氏のキャリアを振り返ります。
大阪大学医学部卒業から臨床研修へ
大津欣也氏は1983年に大阪大学医学部を卒業しました。卒業後は同大学医学部附属病院の旧第一内科で臨床研修を開始し、循環器内科医としてのキャリアをスタートさせています。大阪大学医学部は日本の循環器研究において長い歴史と実績を持つ機関であり、大津氏はこの環境の中で臨床と研究の基盤を築いていきました。
大阪大学の旧第一内科は、心臓疾患や血管疾患の診療と研究の両面で国内トップクラスの実績を持つ診療科です。大津氏はここで心臓病の臨床に携わりながら、研究の世界にも足を踏み入れていくことになります。循環器内科は、心臓カテーテル検査や薬物療法などの高度な臨床技術と、分子生物学や細胞生物学に基づく基礎研究の両方が求められる分野です。大津氏が後に研究者として大成する上で、臨床現場での経験が研究テーマの着想に直結したことは想像に難くありません。
アメリカ国立保健衛生研究所(NIH)での研究
1984年、大津氏はアメリカ国立保健衛生研究所(NIH)の国立老化研究所に研究員として渡米しました。NIHは世界最大規模の生物医学研究機関であり、年間予算は数百億ドルに上ります。この環境で大津氏は老化と心臓病の関係を研究し、分子レベルで心臓の機能や病態を理解するアプローチを身につけました。
NIHでの経験は、大津氏の研究者としての視座を大きく広げたと考えられます。世界各国から集まった研究者と切磋琢磨する環境の中で、国際的な研究スタンダードを肌で感じ取ったことが、その後の海外での活躍の基盤になりました。当時はまだオートファジー研究が本格化する前の時期でしたが、細胞内のメカニズムに着目した研究姿勢は、後の大津氏の代表的な業績につながる土台となっています。
カナダ・フランス・イギリスでの研鑽と教授職就任
NIHでの研究を経た後、大津氏はカナダのトロント大学、フランスのニース大学でも研究活動を行っています。北米・ヨーロッパの異なる研究環境で経験を重ねたことは、国際的な研究ネットワークの構築にもつながりました。それぞれの国や研究機関で異なるアプローチや研究文化に触れることで、多角的な視点から循環器疾患を捉える力が培われたと言えます。
2012年には英国キングスカレッジロンドンの循環器内科教授に就任しています。キングスカレッジロンドンはQS世界大学ランキングでも上位に位置する名門研究大学であり、医学分野では特に高い評価を受けています。教授職への就任は大津氏の研究者としての国際的な評価を端的に示すものであり、研究だけでなく大学院生の指導や共同研究のマネジメントといった役割も担いました。
大阪大学での臨床・教育・研究
海外での活動と並行して、大津氏は大阪大学循環器内科でも臨床、教育、研究に携わってきました。大阪大学大学院医学系研究科では招へい教授の肩書きを持ち、後進の育成にも関わっています。国内の大学病院と海外の研究機関を行き来するキャリアは、日本の医学研究者の中でも特に多彩な経歴と言えます。
大阪大学での活動は、大津氏にとって研究成果を日本の臨床現場に還元する場であり、同時に次世代の研究者や循環器内科医を育てる場でもありました。日本の医療現場が抱える課題と、世界レベルの基礎研究をつなぐ橋渡し役として、大津氏は両方の立場から循環器医学に貢献してきたのです。
国立循環器病研究センター理事長としての現在

2021年4月1日、大津欣也氏は国立循環器病研究センターの理事長に就任しました。厚生労働省が所管する国立高度専門医療研究センターの長として、循環器疾患の研究と医療提供の両面で日本をリードする役割を担っています。理事長として組織全体を統括するのは、研究者としてのキャリアとはまた異なる挑戦です。
国立循環器病研究センターとは
国立循環器病研究センター(国循)は、循環器疾患の究明と制圧を目的に設立された国立高度専門医療研究センターです。対象疾患は心臓病・脳卒中をはじめとする循環器疾患に特化されており、予防・診断・治療法の開発から病態生理の解明まで幅広い研究が行われています。病院と研究所が一体となった組織構造を持つ点も、大きな特徴の一つです。
2019年に大阪府吹田市から同じく大阪府の北大阪健康医療都市(健都)に移転し、最新の設備を備えた新キャンパスで活動を展開しています。基礎研究の成果を臨床に直結させるトランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)に力を入れており、研究の「種」が患者さんの治療に届くまでの距離を縮めることを組織として目指しています。
理事長としての役割と組織運営
理事長として大津氏が担うのは、研究所・病院・オープンイノベーションセンターなど複数の部門を統括し、組織全体の研究戦略と医療提供体制を方向づけることです。大津氏は理事長就任に際し、循環器疾患の制圧に向けた研究の推進と、国際的な研究拠点としての地位の確立を重要なテーマに掲げています。
海外の研究機関で長年にわたって培った国際ネットワークは、国循の国際連携にも直接活かされています。海外の研究機関との共同研究や人材交流を通じて、国循が世界の循環器研究コミュニティの中で存在感を発揮するための基盤づくりが進められています。
健都(北大阪健康医療都市)を拠点とした取り組み
国循の移転先である健都は、医療・健康分野の産学官連携を推進するエリアとして整備されました。国循を中核施設として、企業の研究開発拠点や健康関連サービスの集積が進んでいます。大津氏のもとで国循は、健都を拠点とした産学官連携による健康まちづくりにも関わっています。
循環器疾患の予防から治療、リハビリテーションまでをカバーする包括的なアプローチは、地域の健康増進にも貢献するものです。研究機関でありながら地域社会とのつながりを持ち、研究成果を社会に還元するという姿勢は、大津氏の理事長としての方針を反映しています。
大津欣也の研究実績:心臓とオートファジー

大津欣也氏の研究実績として特に知られているのが、心臓におけるオートファジーの役割を世界で初めて明らかにしたことです。この研究は循環器内科学の分野に大きなインパクトを与え、心不全の治療法開発に向けた新たな道筋を示しました。
ここでは、オートファジーの基本的な仕組みから大津氏の具体的な研究成果、そして今後の展望までを順に解説します。
オートファジーとは何か
オートファジー(自食作用)とは、細胞が自身の構成成分を分解し、再利用する仕組みのことです。細胞内に蓄積した不要なタンパク質や損傷したミトコンドリアなどのオルガネラ(細胞小器官)を、膜で包み込んで分解する一連のプロセスを指します。この仕組みは細胞の恒常性(ホメオスタシス)の維持に不可欠であり、2016年にはオートファジーの分子メカニズムを解明した大隅良典氏(東京工業大学栄誉教授)がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
オートファジーは飢餓やストレスに応答して活性化することが知られていましたが、心臓の細胞でどのような役割を果たしているのかは長らく未解明でした。心臓は一生にわたって拍動を続ける臓器であり、その細胞は基本的に分裂・再生しません。だからこそ、細胞内のリサイクルシステムであるオートファジーが心臓にとってどれほど重要かという問いは、循環器研究において本質的なテーマでした。
心臓におけるオートファジーの保護的機能の発見
大津氏は、
ートファジーに必須の分子であるAtg5を心筋細胞で欠損させたマウスを作製し、心臓におけるオートファジーの役割を解析しました。その結果、オートファジーが働かない心臓では、心筋の構造や機能の維持に異常が生じることが示され、平常時に働く恒常的オートファジーが心機能の維持に重要であることが明らかにされました。
さらに、圧負荷など心臓にストレスがかかる状況で誘導されるオートファジーについても、心臓に対して保護的に機能することが示されています。つまり、オートファジーは平常時だけでなく、心臓に負担がかかる場面でも重要な役割を果たしていると考えられています。この発見は、心不全の発症メカニズムを細胞レベルで理解するうえで重要な手がかりになった研究として知られています。
心不全治療への応用と今後の展望
大津氏の研究は、基礎的な病態解明にとどまらず、心不全治療への応用も視野に入れたものです。科研費の研究課題でも、心不全とオートファジー、マイトファジー、細胞内分解機構などに関する研究に取り組んでおり、基礎研究の成果を新たな治療戦略へつなげようとする姿勢がうかがえます。
心不全は高齢化とともに重要性が増している疾患分野であり、その発症や進行の仕組みを理解することは、今後の医療にとって大きな課題です。オートファジーの制御を通じた新たな治療アプローチは、今後も研究が進む領域の一つと考えられます。大津氏の研究は、心不全の病態理解を深めるうえで、今後も注目されるテーマの一つといえるでしょう。
大津欣也の業績が循環器医学に与えた影響

大津欣也氏の研究は、循環器内科学の枠にとどまらず、細胞生物学や加齢に関する研究とも接点を持つものとして注目されています。また、国循の理事長としての発信や組織運営も、研究者個人の業績を超えて、循環器医療と研究の発展に影響を与える立場にあるといえるでしょう。
基礎研究と臨床をつなぐトランスレーショナルリサーチの推進
大津氏のキャリアを通じてうかがえるのは、基礎研究の成果を臨床の場へつなげようとする姿勢です。オートファジー研究をはじめとする基礎的な知見を、心不全の病態解明や治療法開発へ結びつけようとする取り組みは、大津氏の研究姿勢を示すものといえます。国循もまた、研究所と病院が連携しながら先端研究を進める体制を持っており、橋渡し研究を重視する方針を掲げています。
基礎研究の成果を実際の治療へ結びつけるには、多くの課題があります。そのなかで、病院と研究所をあわせ持つ国循のような組織は、基礎研究と臨床研究を近づけるうえで重要な役割を担っています。大津氏は研究者としてだけでなく、組織を率いる立場からも、こうした流れを後押ししている人物の一人とみることができます。
国際的な循環器研究ネットワークへの貢献
アメリカ、カナダ、フランス、イギリスの研究機関で活動してきた経験は、大津氏の大きな特徴の一つです。国循の公式プロフィールでも、海外での研究経験に加え、キングスカレッジロンドンで教授を務めた経歴が紹介されています。こうした歩みから、大津氏は日本の循環器研究を国際的な研究環境とつなぐ存在としても注目されています。
国循は海外機関との共同研究や先端的な研究にも取り組んでおり、大津氏の国際経験はそうした研究環境の推進にも生かされていると考えられます。循環器疾患は世界共通の健康課題であるからこそ、国際的な視点を持つ研究者・指導者の存在は、今後ますます重要になるでしょう。
【まとめ】大津欣也は循環器医学の研究と医療を支える人物
大津欣也氏は、基礎研究、国際的な研究経験、そして組織運営の3つの面から、循環器研究を支えてきた人物です。心臓におけるオートファジーの役割を明らかにした研究は、心不全の病態理解に重要な知見をもたらしました。さらに、海外の研究機関で培った経験を活かしながら、現在は国立循環器病研究センターの理事長として、研究と臨床をつなぐ体制づくりや国際連携の推進にも取り組んでいます。
研究者としての実績だけでなく、循環器医療と研究の発展を支える立場にある点も、大津氏が注目される理由といえるでしょう。大津欣也氏について知りたい方は、経歴や研究実績をあわせて見ることで、その歩みと役割がより理解しやすくなります。